第1章

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***** それからまた季節は移り変わり。 九月下旬。ギラギラした太陽が、容赦なく照りつけるまだ残暑厳しいこの季節。 豆太郎と彼氏彼女として付き合うことになった日から、あっという間に半年以上が経過していた。 足立さんの言う通り、豆太郎との旅行が終わってから、豆太郎の休みは殆ど無いに等しいくらいのものだった。 だから当然、普通の恋人同士みたく、会いたい時にお互いが都合を合わせて会うということは叶わない訳で。 そんな状態の中でも、私達の関係にあるミラクルな進展はあった。 今日は会社は休みの日。けれど、私は会社の近くにあるサンカフェにいた。 人を、二人待っている。 店内の時計に目をやると、もう少しで午後三時になるところだった。 「待ち人来ず、か」 レン君に入れてもらったアイスコーヒーの入ったグラスの中にある氷を、ストローでぐるぐるかき混ぜる。 レン君は、ランチが本日も大盛況だったらしく、今のうちに少し休憩をとってくるとのことで、いつもの笑顔で私に謝りつつ店の奥へと入って行った。 ある人物達を待っているその間に、ロサンゼルスへの旅行からこれまでのことを振り返っていた。 あの日の朝に豆太郎と結ばれてから、私達はニューヨークへと渡った。 大人になってから外で豆太郎と手を繋ぐこと。それは、二人きりでいちゃいちゃすることよりも恥ずかしいものなのだということに、実際やってみて気がついた。 海外ということもあり、人目が気にならないせいか、豆太郎の大胆なスキンシップが何度かあった。大胆なスキンシップとは、人目も憚らずいきなり路チューしてくることだ。 ほとんどが頬だけど。一回だけ、唇にもされた。 その度に、私は照れに照れまくって豆太郎を怒っていた。そんなやり取りすらも、豆太郎はとても嬉しそうだった。 ニューヨークは、私が昔から憧れていた場所でもあった。五日間のうちにどこへ行きたいかと豆太郎に聞かれて、片っ端から国名を挙げた結果、まず行き先がニューヨークになった。 お洒落なニューヨークの人や街並みを思う存分楽しみながら、豆太郎と屈託なく笑い合える穏やかな時間を過ごした。 指輪も、超有名宝石ブランド本店で、普段からはめれそうなシンプルな指輪を買ってもらった。 二度目の豆太郎との夜は、また夜景がとても綺麗な場所で過ごした。
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