第1章

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 五月に入って、驚くニュースが飛び込んできた。 海音君と石倉あゆみが入籍したのだ。子供も授かったそうで、既に安定期に入っているという内容などが、大々的に報道された。 それで六月の終わりの大安吉日のよく晴れた日、結婚式が行われた。 私も海音君から招待してもらった。 初めて間近で見る石倉あゆみは、本当に可愛かった。 豆太郎と共におめでとうございますと挨拶にいくと、豆太郎の件で頭を下げられた。 一時期、豆太郎との仲が取り沙汰されたからだ。それに、豆太郎が海音君を庇って刺されたことについても謝ると共に感謝していた。 素直で優しい子のようで、ガーデンパーティーの間じゅうずっと、海音君は石倉あゆみの傍でデレデレしていた。 そんな二人の様子を、少し離れた場所で立って眺めながら、豆太郎と二人でワインを飲んでいた。 すると、隣にいた豆太郎が海音君達を見つめながら私に呟いた。 「俺達も、籍入れるか」 「え?」 驚いて横を向くと、豆太郎が悪戯っぽい笑みを浮かべている。 その時にはもう既に、豆太郎は長めの髪に髭といういつものスタイルに戻っていた。 詐欺だ。 ずっと、授賞式の後の感じでいてくれると思ったのに。 お陰でキスの時は、いつもチクチクするから痛い。 「小柴仁香になれって、言ってんの」 微酔いのところへ、突然そんなことを言ってくるものだから、一気に頬が火照っていく。 「それ、もしかしてプロポーズ?早すぎるでしょ」 私が言葉を返すと、豆太郎が溜息をつきながら、私の左手を握ってきた。 「早くないだろ。俺は、もう随分長い間待ってるんだし」 私の左手の薬指には、茶封筒で送られてきた豆太郎の指輪がはめられている。 「佐伯仁香さん。健やかなる時も病める時も、貴方を愛すると誓うんで。俺と結婚してくれませんか?」 相変わらず、低く抑揚のない声。 私を真っ直ぐに見つめる豆太郎の顔が、柔らかであり真剣な表情をしている。 あまりに、その豆太郎の顔が見とれてしまうほどに格好良くて。 すっかりのぼせ上がって、頭に血が昇りすぎていたのかもしれない。 「……はい」 私はつい、そう返事をしてしまっていた。
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