Kussy

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彼女いるよね…あんなルックスで優しそうな彼を放っておく女性はいないだろう。でも案外人気者すぎてみんなが一歩下がって遠慮してるパターンもある。 そんな事ばかり考えていると「それじゃあ、1人ずつチャレンジしてみましょうか」という声にハッと我に返った。 『ヤバ…聞いてなかった!』 せっかく彼が丁寧に説明をしてくれたのに、話を聞いていないとガッカリさせては申し訳ない。神経を集中させて前の人の動きをよく見る事にした。 「えぇっ!怖い~」 女子っぽい感想と共に中々進めないでいる子にも親切に身振りで教え、励ましの声がけも忘れない。 上に行くにつれて傾斜がかかり確かに怖そうだけど、清水さんにアドバイスを求める為にオーバーに声を出している気もする。 『気持ち分かるな…私もあの作戦で行こうかな…』 上に登る事よりも、いかに清水さんと会話が出来るか研究してしまう。怯えている子にも冷静に足の置き方をアドバイスしながら応援をしてくれる。 登りきった後も最高の笑顔で迎えてもらえる。ボルタリングってなんて素晴らしい運動なんだろう! 動機が不純すぎるが、私は帰りに入会手続きを取る気満々だった。 私の番になると、話は聞いてなかったが前の人の動きを見ていたおかげかスンナリと初めのポジションにつく事が出来た。 どのタイミングで『怖い~』と言おうか考えていたが、青のボルダーを目指していると楽しくてつい上を目指してしまっていた。 思った以上に簡単に登れてしまったのだ。 『しまったぁ!!』もっと悲鳴に近い声を出して女子をアピールしようとしてたのに、初心者のコースという事もあり猿のようにスルスルと動いた自分の腕が憎い。 『浜田泉…一生の不覚…』 ロープをつたって降りると清水さんは「凄いですよ~浜田さん。もう少し上のコースを試しても良さそうですね」と褒めてくれたが、私はコミュニケーションを大事にしたかったのに、作戦も虚し空振りに終わってしまった。 運動不足の筈なのに何故!?と考えてみると、私の部活に問題があったのかもしれない。 体操をしていてトレーニングでよく腕の力だけでロープを登らされていたのを思い出す。昔やっていた事が無意識に活かされてしまったのは大きな反省点だった。
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