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涙色アクセ
「俺…浜田さんの事がどんどん好きになって、正直こんなに親を憎んだのは初めてかもしれない。でも親の体調が良くない以上、後を継ぐしか…ない。今まで…本当に有難う」
「うっ…っく…」
冷たい言葉も言ってくれない彼に、私は膝まずいて涙を拭っていた。
「帰りのタクシー代、ここに置いておくから。今日はゆっくりして行って」
パタンと閉じられてしまった部屋のドアは、もう帰って来ないと断言されたようで、私の涙が枯れる事は無かった。
悪夢から一夜明け目が覚めると、私は服のまま眠っていて、彼の姿は当然ない。
とりあえず洗面台で見た私の顔は、人前では見せれない位目の周りが腫れていて、メイクも落としてない酷い顔だ。
これでは外に出る事も出来ないし、ここに残るのも辛い…仕方なくシャワーを浴びる事にはしたが、頭の中では昨日を思い出しては止まらないの繰り返し。
誰も悪くない…清水さんの事情も分かった上でのお付き合いも合意してスタートさせた。
淡い期待を胸に秘めてはいたが、この時のショックは計り知れないモノになっていた。
「清水さん…逢いたいよ…抱きしめて欲しいよ」
帰り支度をして入り口付近まで歩くと、昨日タクシー代を置いとくと言われた場所に封筒があり、中をみると帯封の切ってない札束が3つ出てきた。
『結構な…大金ですけど…』
手切れ金ってこういうのかよく分からないが、初めてフラれた人からお金をもらってしまった。
「まぁ、貰える物は…貰うけど…」
ホテルをチェックアウトすると、すぐにタクシーを拾い、帰りにコンビニに寄ると経済雑誌と飲み物を買うと自宅に戻った。
何気なくパラパラ捲ると、清水さんの対談のページが皮肉にも載っていて、婚約者に触れた内容の所で閉じてしまった。
「もしかして…師匠この事を私に…」
師匠の優しさは有難いけど、今は自分が言ってしまってからの呆気ない恋の終わりにすくには立ち直れそうもない。
振られる時はいつも仕事は上手く言ってたし『次は良い人を見つけるぞ』と切り替えが早かったが、今回は…ちょっと時間がかかりそうだ。
顔は勿論、優しいし誠実で…ベッドの中でも私の為に大切に扱ってくれた。彼と身体を重ねる度に大好きになっていた。
ショックが大きい事もあり、私はそれから一週間位外にも出ず、株はチェックしていたがアクセの通販も少しお休みする事にした。
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