涙色アクセ

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家にこもっていると、彼との事ばかり考えてしまうが、無理して外に出てみると色んな刺激が私のアンテナに発信してくる。 あのピアス可愛いとか、あの靴欲しいとか…。 自分が欲しいと思うと、人にも紹介したいのが私の商売根性の原点かもしれない。日差しが強い中歩くと身体が水分が欲しいと要求をしてくる。 通りの角にオシャレなレンガのカフェを見つけたので、そこで少し涼む事にした。店内は3階建てで1階と2階は禁煙。私はラテを頼むと、見晴らしのいい2階へ移動した。 窓際に座ると、今来た道や通りを歩いてる若者が良く見える。店内にはパソコンをいじってるスーツ姿の人や、タブレットを操作している女性もいるが混んでるとまではいかない人数で、休憩するには打ってつけだった。 ストローでラテを口にすると、泣いて過ごした日々が走馬燈のように蘇る。 あれから清水さんから一切連絡は来ないし、今の気持ちを誰かに共感してもらいたいが、話をする気にはなれない。 「あ…アレ可愛いなぁ」 ベリーのスムージーを飲んでる女性のピアスが細いゴールドのボールチェーンでフロントからキャッチ部分まで繋がり、さり気なく揺れている。 「あれにチャームを足せば、バリエーション広がるな…」 アイデアが湧いてメモに記入しながらふと思う。失恋、恋の終わりにはいつもこんな展開で商売に繋がっている。 暫く好きな人を作らず仕事を頑張ろうとか、同じ失敗をしないようにとか決心しては裏切られている。 でも好きになったら止められないのが私。清水さんに恋をして、今回は一杯涙を流した。いつもと違うのは別れが決まっていた事。 「…でも大好きだった」 簡単なスケッチのチャームは涙型になっていき、描き終わると少しスッキリとした気分になった。 「帰りに手芸店に寄ってみよう…」 こんな感じでパッと浮かぶ事をメモに残してしまうのが、自分でも悲しいが商売に結び付いている。 店を出て近くに手芸店を見つけると、いい頃合いのチャームが並んでいたが、一目で気に入ったのは虹色の光を放つ涙型だった。
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