涙色アクセ

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食事が終わると早々に店から出て、急かされるような空気感で自然とそうなってしまった。 師匠の自転車はもちろんなく、二人で駐車場に向かって歩いて行く。どちらからともなく、ただ無言で。 何も聞かれないし、こちらから話す事もなかったが、特に苦痛もなく日傘の隙間からチラチラと師匠の背中を見ていた。 「ちょっと車取って来るね」 「あ…はい」 車には疎いのでよく分からないが、黒の高そう…でも師匠が乗ってるとそんなにイヤミな感じではない。 手招きされて車に乗ると、目的地を継げないまま静かに発進した。 街並みが外れていき、山道に入った所でさりげなく口を開いた。 「あの…これって何処に向かってるんですか?」 確実に私の自宅方面ではないし、かと言ってドライブにしては山間が深い気もする。周りは鬱蒼と気が生い茂っており、明るい雰囲気ではない。 「なんか空気のいい所で景色でも見たら、またいいアイデアでも浮かぶと思って」 波が寄せる海ではなく、ハイキングコースみたいな場所を選んでいる所が師匠らしくて薄っすらと笑いが出てしまった。 「上手く行かない事も沢山あるけど、商売っ気を出しながら前に進んでる浜田さんって尊敬するな」 「いつも恋愛に失敗したり、フラれたりするとビジネスが成功するんですよね…この調子だと彼ができるのか不安になります」 「いっそ独身貫いてビジネスウーマンになるとか?」 「いや…普通に彼氏欲しいです」 ストレートに発言をする師匠に、私もつい本音がポロリと出て変に気を使われてない分話をしやすい。 山頂を目指しているのか、道に角度がついてくると遠くに街並みが少し見えてきている。 「窓開けてみたら?虫には気をつけた方がいいけど、空気は美味しい気がしない?」 美味しい…というよりは空気が薄くなっているのでは?と思いつつ少しだけウインドウを下げた。 少しひんやりした風と緑に囲まれているので、葉っぱの匂いが混ざっていて、綺麗な空気を吸っているという錯覚を起こしそうだ。
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