涙色アクセ

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車が頂上付近に着くと、駐車場がありそこで静かに止まった。伸びをしながら出て行く師匠に、私も何となく車を降りる。 標高が高いので街並みや遠くの海がボンヤリと見え、手すり越しにだたジッと見つめていた。 海の癒しとはまた別で、緑に囲まれた中からの景色は目だけではなく、身体も生気を貰ってる気持ちがした。 「いいですね…ここ」 「でしょう?浜田さん気に入るかと思って」 見た中の一部を切り取ってアクセにしたい位だ。 「そうですね。思った以上に素敵で、癒されるというかやる気が出るというか…凄くいい経験です」 少しでもイメージを残しておきたい私は真剣な眼差しで見入っていたが、隣から『カシャッ』とシャッターが切られたのを聞いて、少し恥ずかしくなっていた。 「今はスマホという便利なモノやカメラもあるからね」 「でしたね…」 数枚を写真に収めたが、日差しが強く喉が渇いたのもあり、そろそろ車に戻りたいと感じていた。 「やっぱり暑いですね…」 もっと気温が下がってくれば紅葉をみたり、ゆっくりと辺りを探索できるが、今は汗だくになりそうだし着替えを持って来ていない。 車に戻った師匠は早速、運転席にあったコーヒーの缶を開け始めたが、私は何もない。飲もうとしてハッとした師匠が声をかけた。 「あ…すみません。自分のはクセでここに置いておくんですが…浜田さんの分がないですね。下に降りるまで時間がかかるし、半分で我慢してくれませんか?」 そう言われると更に渇きが増してくる気がして、即座に頷いた。師匠が先に飲み、缶を受け取ると私は一気に飲み干した。 「ふふ…なんか株教室の時を思い出しますね」 ピタッと動きが止まり、あの時の映像が浮かんでくる。私は筆記用具を貸して師匠からは飲み物を貰う。 喉がカラカラで必死だったが、よく考えてみたら今日を含め二回も間接キスをしている。 「すいません…ガッツリと飲んでしまって…」 「今日は前回みたいに『打ち上げられた魚』ではありませんが、すぐになくなっちゃいましたね」 何かがツボにハマっているのかクスクスと笑っている師匠の姿を見ると、今更ながらに自分の失態を思い出し、恥かしい気持ちで一杯になる。
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