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山道を下っている間、私は誤魔化すように外を見ていたが師匠はお構いなしで話しかけてくる。
「浜田さんって本当面白い。一生懸命に生きてるって感じが俺にはなくて羨ましいよ」
「そうですか?…まぁ確かに失敗は多いですけど、基本楽しんでるかもです」
「いつも…キラキラしててダイヤみたい」
そんな見栄えのいい物じゃないが、師匠が褒めてくれるのは認められたようで何だか嬉しい。
次の恋こそ大事にしようと決めては失敗の連続で、苦い経験しかしてないのでダイヤというよりはオニキスみたいに透明感はない気はする。
「俺は先読みするクセがついて躊躇してしまうけど、本能に従って行動すると、たとえ失敗しても気持ち的には満足じゃない?」
「…それはあるかもしれないです」
今回の清水さんだって二人きりになるチャンスを伺って連絡先を渡したり、条件付きの恋だとしても構わないと思えた。
そのまま引き下がったら後悔すると思ったから。
結果はこうなって涙は沢山流したけど、あの時の気持ちには従っていた。
そう思うと悔やむよりも、今は涙アクセのシリーズが売れ始めている喜びに感情をシフトした方がいいように思える。
「あ…少し笑顔が見えてきた。やっぱり浜田さんはそういう感じがいいよ」
「有難うございます」
師匠の横顔を何気なく見ると、大人の雰囲気と余裕が感じられ、私にはこれが足りないと勉強になる。
きっとガツガツし過ぎなんだよね…私。
緑に囲まれた山道を下りながら、登る時には想像もしてなかったが、自分の中でかなり気分転換されていた。
「因みにダイヤって何カラットくらいですか?」
「ふふ…いつもの浜田さんに戻って来た。今のところ1カラット位」
「嬉しいな…頑張らないと」
外の景色を眺め、助手席に深めに腰をかけてると、師匠がBOXを指をさしてこう言った。
「その中に箱があって、石のついた指輪がある。これからも、浜田さんの姿を見ててもいいなら受け取って」
「えっ!?」
プレゼントをくれるにしても先に中身を言われサプライズもないし、これから…ってそれは恋愛?それとも友達?と頭がついて行かず、固まってしまった。
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