涙色アクセ

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「へぇペアアクセに進化したんだ…素敵だね」 「はい。彼が出来るまで自分持ちしてもいいし、お揃いにしたり…勿論自分でつけてもいいんですけど…」 まだ試作品なので、率直な感想を出してくれる師匠の言葉を期待して待つ。 「いいかも…これ俺が買ってもいい?」 「えっ!?」 「サイズもいいし、まだ世に出てないからちょっと嬉しいし…どうかな」 腕を見せてくれる師匠にとても似合っていて、イメージして作った価値はあった。 「それ…藤野さんがつけたの想像して作ったから作戦は成功です」 ちょっと顔が赤くなるのが自分でも分かったが、黙っておけないタチの私は言ってしまっていた。 「あ…そう…なんだ。嬉しいけど、なんか照れるね」 「私もですけど、そういう感じも楽しんでみません?」 「うん。いいかも…」 ブレスをはめた手が私の肩に降り、不意に頬を伝ってキスをされる。 「無理しないっていい。今のは無理してない結果」 「いい…と思います」 ぎこちない車内はお互いの乾いた笑い声と赤い顔。 今までとは違う体験で、照れ臭いけど素直な気持ちになれる。 車を走らせた師匠はいつもの調子に戻っていたが、自宅着いてから歩き始めてしまい、どうやらナポリタンを食べに行くらしい。 私は違う意味で緊張しながら、カフェイマリの扉を開ける師匠の後ろに隠れた。 平日で昼を回った時間、オフィス街の波は一旦落ち着いているようだ。 師匠は研修の時みたいに奥の席に座り、私も向かい合わせになると双碁さんが『ナポリタンでしょ』と目で合図を送ってくれた。 「琥珀でいいから…」 ポソッと呟く師匠に、頷いたものの急に呼び捨ては難しいし、相手は私よりも年上だ。 「私も名前でいいです。でも、私は『さん』はつけないとむず痒いです」 「ふふっ…それでいいよ」 ナポリタンを持ってきた双碁さんは、すぐに私達の異変に気づいてしまった。 「なんか雰囲気違うな。琥珀がアクセつけ、目に落ち着きがない。泉ちゃんもソワソワしてるし…まさかお前らもうやったの?」 私が水を吹き出し、琥珀さんが静かにテーブルを拭くと澄ました顔で言った。
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