第1章

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 どうにも落下問題が簡単に解決しないらしい。科学部プラス悠磨はその場で検証会議を始めた。 「あっちこっち傾いているのは解る。となると、落下するのもこの傾きのせいだ。問題はどうして違う箇所から落下するかだな」  桜太が場を仕切るように問題提起した。 「そうだな。しかし問題を傾きだけでは片付けられないだろう。この本棚の本が互いを支え合っているというのも見過ごせない」  悠磨は楽しそうに参加した。なるほどこうやって音楽室でもやっていたのかと面白くなる。ただし、科学部に入る気はまったくない。 「ぎゅうぎゅうになっている個所を抜くと落ちるというところから、圧力も関係していて間違いないな。緩んだことが反動になっているんだ」  莉音が最初の圧力説をもう一度上げた。 「まとめると、圧力に支え合う力。それと本棚にあると思われる傾きや歪みが落下の原因となっている。それも一つだけが問題ではない」  桜太の言葉に誰もが頷いた。どう考えても理由は一つではない。どれか一つでも条件が当てはまらない個所では落下しないのだ。 「それじゃあ、実際に目撃できた三段目で検証するか。下手に抜けないわけだしさ」 楓翔がメジャーを出したり戻したりしながら提案する。あの勝手に戻る感触が楽しいのか、ずっとシャーという音を立てている。 「そうだよな。互いに支え合う力で持ってるんだもんな。下手に抜いたら崩壊する」  本棚の端が所々切り取られている事実を知った悠磨は恐る恐る本棚を見上げた。全部で八段もある大型の本棚だ。それも部屋の長い辺に置かれた棚である。それが崩壊の危機とは思いもしなかった。  これから週に1・2回回ってくる図書委員の仕事が怖くて仕方なくなる。もう二度とよじ登って上の棚に本を仕舞うなんていう暴挙はしないぞと悠磨は心に誓うしかない。
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