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「つまり本棚の傾きは確定なのか。楓翔、一応ちゃんと確認してくれ」
危険だと言っているだけでは謎の解決にならないので、桜太は水平器を持つ楓翔に確認を頼んだ。どこまでが歪んでいるのかははっきりさせておいた方がいい。
「オッケー。じゃあ、大倉先輩が本を抜いたところをスタート地点として」
測量できるとあって楓翔は張り切って棚に近づいた。もう恐怖していたことは飛んでいるらしい。さすがは興味最優先の科学部の一員だ。
「たしかに下っているな。それも化学の棚まで。そしてこっちから上っている。丁度落ちたのはこの二つの角度が交わるところだろう。誰か、分度器持ってないか。ここが最大角みたいだ」
せっせと歪みを確かめていた楓翔が当たり前のように手を差し出してくる。しかし角度を習ったばかりの小学生でもあるまいし分度器なんて持ち歩いていない。全員がポケットを触ったところでその事実にぶち当たった。
「あるぞ」
固まるメンバーの背後から、いきなりそんな声がする。
「へっ?」
桜太が振り向いてみると、いつの間にか自習していた真面目な生徒たちが野次馬として集まっていた。どうやら9人でがやがやと言い合っているのがうるさかったらしい。それでも文句を言わなかったのは面白かったからだろう。さらには男子生徒が分度器を差し出しているのだ。
「すみませんね」
なぜ彼が分度器を持っているのかという変人臭はここでは目を瞑り、桜太は分
度器を押し頂くように借りた。
「どうだ?」
分度器を受け取るなり、メジャーを平らな面として角度を測る楓翔に芳樹が訊く。観衆がいるからにはちゃんと報告しないとおかしいだろう。
「5度ってところかな。よく今まで気づかなかったよな」
満足そうな楓翔は図書委員には耳が痛いことをずばっと言ってしまう。
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