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さて、舞台では、漫才コンビがシメに入っていた。
客席から大きな拍手が聞こえてくる。
「かれんさん、そろそろ出番です」
AD役の生徒が声をかけてきた。
「あ、はーい」
かれんは返事をして歩き出したが。
「きゃあっ!」
床を這うコード類に足をとられて転んだ。
かれんはすぐに起き上がったが、またすぐに座り込んだ。
「いたた」
かれんは顔をしかめて自分の足首をつかんだ。
どうやら、転んだ拍子に足をひねったらしい。
「もうダメ。わたし、歌えないわ」
かれんは涙目になった。
「あきらめちゃうの? この日のために練習してきたじゃーん?」
のあは能天気にペンライトをかれんに向けた。
いまだにインタビューごっこが続いていた。
かれんは見向きもしなかった。
「こんな足じゃ無理よ」
かれんは言った。
かれんは毎日、声がかれるまで歌を練習してきた。
その努力が一瞬で水の泡になったのだ。
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