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目の前には、太々しい表情で舌を出して私を見ている女性がひとり。
「あんな嘘に騙されるほうが悪いんじゃん。大体さ、希穂ってば若槻君になんて興味ないみたいな態度取ってたくせに何時の間にか接近して彼女になってるし。超アザトイよね」
腕組みをして私を見て、しゅんしゅんと鼻をすすらせて声を震わせていた女性の姿なんてない。
「あ、あざといって……千尋だって彼氏がいたじゃない!」
「彼氏はね。でも、若槻君が付き合ってくれるって言うんだったら即バイバイしてもいいような相手よ」
「な……」
「ま、私ならあの時逃げ出さずに若槻君の部屋に乗り込んで事実を確かめるね。仮に別の女とベッドで裸になってよーが、本命は私だよって言って追い出してやるわ。あの後別れちゃったみたいだけど、そんなの希穂が自分に自信がなくて逃げた結果じゃん」
「……っ」
私、唇を噛んでしまう。
悔しいけど……図星だ。
「ただ、あの後、若槻君が遊びまわってたって噂は本当に聞いたよ。希穂と別れて女の子との付き合い方変えちゃったんじゃない?っていうか話ってそれ?」
「……」
「私ね、いま婚約してて近々結婚するの。だから希穂も過去ばっかり引きずってないで新しい恋を探したら?あ、ごめんなさい。彼氏いないって決めつけて言っちゃって」
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