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季節は変わり、翌春、仁木君と私は手を繋いで桜並木を走っている。
「もうっ、間に合わないかな」
「大丈夫、ギリギリまで粘ろ」
親戚の結婚式に参加するため帰京しようとしたが、仁木君も両親に挨拶がてら着いてくる、という話になっていたのだが。
「俺が寝坊したばかりに……マジごめん!」
都会の中の桜並木を抜けて、大通りからタクシーで二十分。
乗り遅れても、式は明後日だから問題ないのだが、チケット代が……。
でも、間に合わないと言いながらも、振り返った仁木君と目が合うと、自然に笑みが零れてしまう。
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