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「愛梨、笑ってる」
「嬉しくて」
「え?」
「一緒にいれることが……嬉しくて」
恥ずかしいが、なるべく自分の気持ちを素直に言葉にしようと心がけていた。
「俺もだよ、両想いだね」
ニッと笑顔を見せた仁木君は、私の腕を引いて舞い散る桜の中を駆けだす。
ふわり、頬を掠った春風がくすぐったく、私は仁木君の大きな背中を見て口角を上げた。
雲の見えない澄み切った青空は清々しく、まるで私の心を表しているかのよう。
握られた手に再度力を入れ、私はまた大きな一歩を踏み出そうとしていた。
〈終〉
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