なぐさめ

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突然、コツンと額を押し当てられた。 吐息が触れるほどの距離。長い睫毛と、高い鼻梁が視界に入る。 「好きだよ、ずっと触れてたいほど。  イヤだなんて思うわけないよ」 ものすごく近距離で、そう囁かれた。 闇色の瞳は魅惑的に煌めき、そこに閉じこめられたかのように錯覚するほどだ。 「……なんで?」 奏は驚いて目を見開く。 「だって、あんなにうっとり甘えてたのに急に深刻な顔して離れようとするんだもん。何考えてるかなんて、わからない方がどうかしてる」 「そう、じゃなくて」 ……今、好きって言ったよね? その証拠、とでも言わんばかりに蓮登の唇が奏の頬に触れた。それだけで、身体中に電気が走ったみたいに甘く痺れる。 次に耳に。身体の芯から熱くなる。 「……好き?」 それでも、痺れそうな唇を動かして聞かずにはいられない。 だって、ずっと前に私のこと振ったよね? ――どうして、今更 「好きだよ、ずっと」
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