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「颯馬先生、意味が分かんないんだけど」
「奏、今度蓮登って呼ばないとお仕置きするよ」
昔と変わらぬ王子様を思わせるような完璧な容姿で、蕩けそうなほど甘い声で、伝える言葉はどこかおかしい。
「奏。大事なことだから、ちゃんと聞いて。
これだけは、耳触りの良い嘘で飾りたくないから。
束縛は酷いし、愛情表現も歪だし、きっとこの先、奏を幸せにできることはないと思う。
こんな重すぎる愛で良ければ、受け取って欲しい。
奏が告白してくれた日よりずっと前から愛してたよ、もちろん今でも」
耳たぶに触れる、軽いキス。
それだけで、ジンジンと身体が熱くなる。
――颯馬さんのこと、何もわかってなかった。
奏は思い知る。
高校生の告白に対して、どれほど深い想いで悩んでくれていたのか。
颯馬の心内など、全然慮ろうともせずに、ただ一方的にショックを受けて引きずり続けていた。
「こんな俺のことを、それでも好きと思うならキスして。
もう、何があっても離さないから」
蓮登の声が、切なく響き鼓膜を甘やかに震わせる。
この言葉の意味を、もっともっと吟味すべきだったのだ。時間をかけて。会話を重ねて。
けれども奏はただ流されるように、蓮登の唇に自分の唇を重ねていた。
「嬉しいよ、奏」
ぎゅうっと強く抱き寄せられ、ただ今感じる幸せに酔いしれていた。
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