奇蹟の朝

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「…は?…嘘…でしょ?」 高層ビルの建ち並ぶ風景 朝の光に照らされて色付く空気 高層マンションのベランダから ビル風に煽られながら見渡したそこは… 『東京?』 うん… だってスカイツリー見えるもんね 間違いないと思う だけど…… 私…昨日の夜寝る前はたしかに ここから300キロはある田舎にいた 自営の酒屋の配達してたよね? 落ち着こうといつもは無造作に束ねてある髪をおさえた 腰まで届く程伸びた色素の薄い髪が風に煽られて ゆらゆらしている Tシャツにジーパンしかもってない筈なのに、肩と胸元の大きく開いたドレスを着ている 風に煽られて際どいとこまでスリットの入ったスカートも慌てておさえる ベランダに手を乗せて面白そうにこっちを見ている『男』をチラッとみる 妖艶な微笑みを浮かべるこの人は 芸能界の事知らない私でも歌はきいた事ある 国内では、人気実力ナンバーワンの バンドのボーカリスト『和樹』 彫りが深くて整った顔 眼光の鋭さの抜けない目 人をあまり寄せつけない威圧感 洗いたての髪が、サラサラと揺れてる 形のいい唇をニヤっと歪めた 「忘れたとは言わせねえよ? 昨日の夜『約束』したよなあ~」 「や、約束?」 少し怯えて見つめると鋭い眼差しが、それを捕らえた 「オレのモノになるって…」 オレのモノ?一体そんな事いついった? そもそも、この人といつあったっけ? まだ起きたばかりの頭は 稼働率が20%くらいしか動いてない ウーン 昨日は……私の二十回目の誕生日 いつもは、独りぼっちだけど… 昨日の夜は沢山人が祝ってくれた……? 「…………きな」 和樹が私の手を引っ張ていく くすくす笑い 「オマエ、もう帰れねえよ? 今日からここに住むんだぜ?オレと」 ―――――一緒に住む?どうして? まだ、思考回路が迷子中だ ベランダから中に入ると…… 広々としたリビング? テレビでしか見た事ないようなお洒落なマンション でもあまり生活感がない
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