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「聞きましたよ、お嬢様!」 翌朝のことである。 勢い良く扉が開き入ってきたナータの表情は酷く笑顔であった。 ベッドから起きたばかりの私の元に足早に来ると我慢出来ないとばかりに口を開く 「旦那様を口説いたらしいですね!」 「…は?」 数秒開けてそんな間抜けた声が出た。 どうやら昨日の夕刻のことであるとナータから聞いた話でわかった。 確かに大声を出した。 口説いたわけではないが聞いている人がいたのならそうとられても不思議のない台詞だったことは認める。 しかし間違いである。 その噂の全て 完全に間違いである。 ナータには全て話納得に至ったが噂は広がっているようで、この屋敷中歩くのが嫌になった。 昨日の公爵の言葉「大事にならないといいな」のことはこのことを言っていたのだと気付く。 もう遅いのだけど。 「噂を弁解したいわ…」 鏡に向かい髪を解かす。 後ろはナータに任せつつ愚痴は溢れる。 「情熱的な御方だと。でも悪い噂ではないのですよ」 「私には充分悪い噂よ。この私が情熱的…。あの公爵に対して…有り得ないわ」 「お気になさらず。…旦那様と約束を取り付けたのでしょう?ならいいじゃ御座いませんか?」 ナータが必死に励ましてくれているのがわかって、自然と笑みが浮かぶ。 「そうよね。話を聞いてくれると言わせただけ私に利益のあることだものね。…後ろは?」 「大丈夫です。跳ねた髪も有りませんよ」 「ありがとう」 平凡顔だから、というものもあり全く貴族には見えず、だからか格好だけはしっかり貴族らしくしていきたい。 じゃないとお母様に叱られる。 今はお母様は居ないけれど、ジオル公爵に申し訳が立たない。 ジオル公爵はあれでも女性に人気があるから。 そんな彼が私のような低貴族と婚姻を結び、しかも平凡で幼女体型で…。 と恨まれる要素が沢山ある私は多分よく思われてない。 女の嫉妬は怖い。物凄く。 だから身だしなみくらいはしっかりとしたいのだ。 それくらいで女の嫉妬はどうにかなる訳ではないのだけれど。
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