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私は、テアー・ザクセンの作品を何も知らない。名前だけは知っている。文学の授業で習ったから、期末テストの為になんとなく名前だけ覚えたのだ。読書は好きだが、著者までは覚えていない。
なんとなく本のタイトルに惹かれて読み始めたり、本屋のポップや雑誌やニュースで紹介されている流行りの本を読んでみたり、とにかく常に本には振り回されている。
だから彩夏が金髪にしてきた時には、もちろんテアー・ザクセンの『仔猫と少女』を図書室から借りてきていた。
『仔猫と少女』は、このような話だ。
著者であるテアー・ザクセンが幼少期の頃に実親から激しい虐待を受け、彼女にだけ見えていた人間の言葉を話すことができる仔猫マリィと共に11歳で実親を惨殺してしまう。そして、施設に入ってからのテアー・ザクセンが、仔猫マリィが見えなくなってしまった(彼女は『マリィが死んだ』と書いていた)20歳になるまでを日記のようにまとめた衝撃的な話だ。
作品も衝撃的だが、彩夏はつまり、この少女=テアー・ザクセンに成ったわけだ。読み終えてから、改めて彩夏を見た時に、ぞわっと鳥肌が立った事のほうが私には衝撃的だった。
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