『恋という死に至る病』

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第一章 花は何故もなく咲く  カーナビの案内を鵜呑みにしていたら、迷子というよりも、遭難?という状態に陥っていた。  カーナビは、昨日、車に取り付けたもので、この旧型を通り越して、アンティークにさえ思える車に、よく付いたものだと思った。快適なドライブと思っていたが、夜になっても目的地に到着しない。  カーナビを見ると、目的地まで後一キロのまま、数時間が経過していた。  車を降りて周囲を見ると、対向車が来たらすれ違えないような細道に、片側が森、反対側は崖の状態であった。  崖はさほど深くはなく、崖を訂正して、土手と変えてもいい。  問題は、このような道を、かれこれ二時間も走り続けていることだ。  次第に日が沈み、周囲に家は一軒もないどころか、対向車すらもない。こんな道が、日本にあったということも、俺には、驚きであった。  俺は、ポケットから携帯電話を出すと、生葬社に掛けてみた。 「百舌鳥(もず)さん!」  しかし、生葬社の店長、百舌鳥は留守で、女性が対応してくれたが、仕事内容については、何も聞いていなかった。  電話を切ると、ため息が出る。だから、鹿敷(かしき)の仕事は嫌なのだ。  生葬社のオーナー儀場(ぎば)、この人は、眠っている時に見る夢を操り、過去を変える事ができる。しかし、その支払いは、体か能力となる。儀場の、客?兼、恋人が、鹿敷であった。  鹿敷は、これ以上、体の支払いが儀場に貯まるのが嫌で、生葬社に依頼をしてきた。  百舌鳥は鹿敷の話を聞くと、俺に行けと指示を出した。そして、今の状況に至る。 「遊部(あそぶ)さん、あんまり離れると、俺、眠りますよ」  丼池 昴(どぶいけ すばる)が自宅に電話を掛けていた。その内容は、今日、帰れそうにもないであった。  こんな場所で野宿なのか? 「遊部さんも一緒だから、心配はないけど、迷子になっている」  昴の兄、丼池 成己(どぶいけ なるみ)も在宅していたらしい。昴に、現在地を聞いていた。  鹿敷の依頼は、葬儀場にご遺体を運んで欲しいであった。  鹿敷は葬儀社の社長の息子で、跡取りであった。この案件は、家族葬をしたいとの依頼であったが、その他にかなり面倒な申し出があった。葬儀社の皆が断ったが、鹿敷は引き受けた。
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