『恋という死に至る病』

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「頑張ってください!」  手を振って見送られてしまった。  その後、生葬社の女性警官?に送られた情報によると、俺を襲った男は、洞窟の中で白骨に囲まれて自害していたという。  その白骨の中には、最近のものもあり、捜査が開始される。  大鷹に会いに旅館によると、そこで船生が寛いでいた。 「船生さん?」 「解決しそうで良かった。露天風呂にも入ったし、うまい飯も食べた。二人分の宿泊費の支払いを聞いたら、無料だったけど?」 「……働いてしまいました」  布団の上げ下げ、饅頭の仕込みも、その後やってしまったのだ。 「そうか、貧乏性だよね、遊部君」  船生は、百舌鳥から連絡を受けて、大鷹に説明してくれていた。説明の為に、わざわざ旅館まで来たのに、恩着せがましいことは言わない。 「なあ、大鷹。どうして遊部君には、賄いなの?ちゃんとした食事をあげなさいよ」 「賄いのほうが美味しいからだよ」  大鷹は、昼飯の賄いもくれた。本当に美味しい。 「美味しい!」  すると、三時に食べろと、おやつまで持たせてくれた。 「帰ろう」  三連休なのに仕事をしてしまったが、それでも、モヤモヤは晴れた。 「船生さん、来て良かったです」  又、殺されそうになったが、来て良かった。 「そうか、で、随分、饅頭を購入したね」  車内が狭いので、饅頭がより大きく感じる。 「生葬社に寄ってから、帰ります……」  女性達のご機嫌を取らなくてはいけない。もしかすると、休日に出勤して、異物(インプラント)を調査してくれたのだ。  高速に乗り走り続けると、やっといつもの風景に戻って来た。  運転だけでも、かなり疲れる。船生をアパートに降ろすと、生葬社の駐車場に車を止める。饅頭を担いで生葬社のドアを開くと、一服していた彼女達が無言で俺を睨んでいた。 「ま、饅頭です」  一人が無言のまま箱を開け、一個食べると、他に勧めた。次の女性も食べると、隣に勧める。そうして全員に行き渡ると、テーブルに残りの饅頭を置いた。 「皆で食べてください!」  それぞれが一箱取り終わると、百舌鳥が店長室から出てきて、一箱取った。 「残りは、丼池のご両親に差し上げなさい。心配されていたよ」  深く頭を下げると、家に戻ろうとした。 「いつも、お土産をありがとう」  女性の一人が、俺に声を掛けてくれた。こんな事は、初めてであった。
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