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この手は、力仕事をしている手であった。儀場や昂の手ではない。ごつごつとしていて、俺よりも背が高い。
そんな観察も、苦しさに途切れる。
そうか、これが死なのか。自分の内部に、自分がいるような感覚がし、意識が終わった。
それなのに、何故、又、目覚めがあるのだろうか。誰もいない洞窟のような場所で、俺は目覚めた。
暗いが、真っ暗ではなく、外からの光が見えた。洞窟の中にも、雑草が生えていて、そう奥でもないと分かる。でも、外へと続く穴は上にあって、そこを登らなければならないということか。
外から声が聞こえてきて、俺は無意識に起き上がった。体のあちこちが痛い。ここへは、上から投げ捨てられたのかもしれない。
奥に向かい歩き、岩場の影に隠れていると、上から誰かが覗いていた。
「ここにもないぞ。本当に、捨てたのか?」
「ああ、死体は穴に捨てた」
やはり、俺は死んでいたのか。
「どうする?このままでは、回収屋、全員が廃業だぞ。まさか、あんな制約があったなんて知らなかったし、面倒だ」
制約とは何であろうか。俺は、さらに洞窟の奥へ向かってみた。本当にあちこちが痛い。
かなり奥に進んだと思ったが、又、光が差していて、その穴から空が見えていた。ここは、何かの採掘場かもしれない。光の中に、壁が見え、それは人口のものであった。
でも、外にはまだ声がしていた。
全身が痛いし、暫し、横になっていよう。
洞窟の中には、分岐もあり、棚のような穴もあった。小さな穴もあり、そこに入り込むと、丸くなって目を閉じた。
「あれが、最後の異物(インプラント)だなんて知らなかった。最後の異物(インプラント)の死をもって、回収が終了しました、なんて、困るだろ。どうにかしないと」
俺が死んで、何かがあったらしい。でも、今は眠っていたい。
「もう、回収されたのではないのか。だって、異物(インプラント)の引き取りは、現に終了してしまった」
異物(インプラント)の引き取りがなくなり、俺のせいになっているのか。俺には、制約などない。
話し声が徐々に近くなっているので、洞窟の中に入ってきている。近くを誰かが通り過ぎ、足音が又遠のいていった。
「あれを蘇らせないと鹿敷を殺すと、儀場に連絡してみたけどな。まあ、鹿敷はもう殺したけど」
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