『恋という死に至る病』

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 昂の姿を探すと、やはり泣きながら俺に走って来ていた。 「俺、遊部さんがいないと眠ったままなのですよ。突然、消えたり、死んだりしないでください!」  その通りだ。昂が一人で起きていられるようになるまで、俺は生きていなくてはならなかった。 「それで、ここは、どこ?俺、死んでいたみたいで、記憶がない」  ここは、昔の廃坑跡であった。神社の封鎖された入口から、廃坑まで繋がっているらしい。 「俺が消えてから、何日が経っているの?」 「三日です」  では、鹿敷が殺されてから、何日経過してしまったのだ。 「鹿敷さんは見つかりましたか?」  丼池が俺から体を離すと、首を振る。 「では、探さないと……」  でも、三日も死んでいたせいなのか、身体が冷たくなってしまっていた。動かそうにも、思うように動かない。 「家に帰りましょう……母さんも遊部さんが帰って来なくて、寝込んでいます」  丼池が俺の腕を離さない。  鹿敷は、儀場が探しているが、まだ見つかっていなかった。儀場への脅迫電話は、俺を生き返らせた時から無くなっていた。  もう鹿敷を殺していることは分かる。でも、鹿敷の心は、どこかに彷徨っている。それを拾って来なくてはならない。 「探さないと……」  俺が、異物(インプラント)を大量に持って帰った事が原因なのだ。儀場は、本気で鹿敷に惚れている。鹿敷のために、何度も俺を生き返らせたくらいなのだ。 「遊部さん、闇雲に探しても見つかりません。昂が情報を収集しています。とにかく、家に帰りましょう!」  でも、俺が生きている意味は、鹿敷を助けるためなのだろう。鹿敷が生きていなければ、俺が生きている意味がない。 「行かないと……」  ポケットの異物(インプラント)には、鹿敷の最後の記憶がある。そこで、犯人を特定して、鹿敷を捨てた海を特定しなければならない。  丼池の腕を振り切って、俺が走ろうとすると、儀場が前に立っていた。儀場が俺を殴ろうとしたので、咄嗟に避けてしまい、殴られておけばよかったかと我に戻った。 「いいか、次は無い。もう生き返らせない。だから、安心して眠っていい。そして、目が覚めたら、鹿敷の居場所を探して欲しい」  儀場が疲れていた。 「はい、鹿敷さんの情報を教えてください」
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