8人が本棚に入れています
本棚に追加
気がつくと彼女は僕の方を向いて立っていた。
背景がぼやけ、君の輪郭、姿だけがはっきりと見えた。
君は微笑んでいた。馬鹿みたいだけど女神かと思った。
彼女の足元から視線を上へと移していく。
彼女の左手首になにか金属のような物が見え、ぼんやりと違和感を覚えながらも、視線を上へと移した。
彼女の顔まで辿りついて、彼女の口が動いていることから先ほどから彼女が自分に話しかけていたんだと気づく。
先ほどから遠くに何か聞こえていたものは、彼女の声だったのかと納得する。
全ての音がフィルターを通したようにくぐもって聞こえていた。
見かけとは異なり、少し緊張感の欠ける低めのだらしない声。
しかし、僕は彼女の細かい言葉を聞き取ることもせず、彼女の存在自体をただぼんやりと認識していた。
そんなぼんやりとした僕の意識が唐突に戻る。
「あの、すみません!」
ずいっと彼女の首筋に近づいた。
彼女が何かを話していた途中であったが、それを遮ってもお構いなしだった。
彼女は少し戸惑った様子だったが、黙ってその状況を耐えてくれた。
なんだ…これは。
彼女の首筋には、緑の細いペンで何か書かれていた。
それは数字とアルファベットが5行ほど正方形の形で書かれている。
最初のコメントを投稿しよう!