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少しむっとしてもう一度彼女の方を見る…
彼女は困ったように目を瞬かせていた。
人の輪はまばらに散り始め、ソファーへと移動し始めていた。
彼女がこちらを見たときに、もう一か所。彼女の前髪が揺れて、額の左の髪の生え際に、文字列が書かれているのが見えた。
僕はつい彼女の前髪をぐいっと持ち上げてしまった。
言っておくが、僕は本来異性に積極的なほうではないし、こんな失礼な態度をいつも誰にだってとっているような奴ではない。
ただ、今回は、今回だけは彼女の体に書かれているものが、僕が一番興味のあるものであるから、きっとだけど。少し…いや、かなり自分を見失っている。
「あ…、す、すいません。」
僕は持っていた手を出来るだけ優しく、前髪を元の形に戻した。
そんな僕に彼女は戸惑いながらも、少し微笑み僕がその文字列を新しい用紙に書き加えるまで髪を持ちあげていてくれていた。
額の文字列は書きかけらしく、正方形にならず途中で途切れていた。
メモを見返すと、それは左の首筋にあったそれと途中まで一緒であった。
書きかけて、途中でこちらに書き換えた?
そんな風に思えた。
そして、僕は自分のメモの確認に彼女の体の文字列を見させてもらった。
まず、おでこだろ…これはよし。んで、次は…首筋。
複雑だけど、大丈夫。
そして…
言い訳を言うなら、少し、文字列に気を取られ過ぎていた。
本当だ、やましい気持なんてこれっぽっちもなかった。
彼女の鎖骨のすぐ下にある文字列を見ようとして、彼女のワンピースに指をかけて、ハッとした。
一気に自分の顔が真っ赤になったのを感じた。
「ご、ごめん!」
彼女の方を見ると彼女も同様に真っ赤になっていた。
彼女は照れたように、少し微笑みワンピースをずらして文字列を見せてくれた。
僕は恥ずかしながらも、確認させて頂いた。
本当何なんだろう…これ。
僕は自分の手元に残った文字列に目を通した。
どうして彼女の体に?
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