16(承前)

2/7
77人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
90秒後、拠点を半円形に囲む光のゾーンで、ばらまかれたLEDボールがいっせいに消灯した。甲3区訓練場は暗闇に包まれる。岩場を夜風が抜ける音だけが響いた。  タツオは戦場用の情報端末をつけ、拠点になったおおきな岩から離れ、物陰に隠れていた。 「こちら、逆島。そっちに動きは?」  ジョージの声が耳元のスピーカーから聞こえた。 「敵もいきなり暗くなって困惑しているようだ。動きはない。罠(わな)だと思って慎重になっているのかもしれない。タツオはそのまま待機してくれ」 「了解」  ひとりで隊から離れるのはひどく恐ろしかった。タツオは暗闇のなか腕のなかの自動小銃を握り締めた。これをつかうときは最後の瞬間だろう。敵と遭遇したらまず助からない。こちらの何倍もの兵力が投入されているのだ。  現在装着されたものと予備の弾倉がふたつ。フルオートとで引き金を落とせば、15秒とはもたずに弾切れになる。アクション映画などを観ていると果てしなく弾をばらまくが、実際には自分で運んだ分しか兵士は撃つことはできないのだ。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!