第2章

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 フロリアは私を励ますようにわざとらしい明るい声でそんなことを言った。でも。  「そう……」  その無理をした笑顔に、私は逆に不安で押しつぶされそうになってしまった。  「ふふ……」  いきなり、フロリアが笑いだした。  「ど、どうしたのフロリア」  「かなたが僕のことを心配してくれているのが、嬉しくてね」  「フロリア……」  それが本心からきていることがわかって、私も少し嬉しくなった。  「ねえ、キスしてくれないかい?」  「え? こんなときに?」  「今朝はせっかくの君からのキスを、僕は断ってしまったからね」  「あ……」  「あまりの悔しさに、一日中ベッドの中で歯噛みしていたよ」  「そう……じゃあ、キスしてあげる」  「うん……え?」  私は、フロリアのおでこにキスをした。フロリアは、ちょっと不満そう。  「……これくらいで僕が我慢できると、君は思ってるの?」  「ふふ、だって、これ以上のことをしたら、フロリアはそれだけじゃすまないでしょ?病人は安静にしていなきゃね」  「……ふふ」  すると、フロリアが笑い出した。  「やっぱり、君は、そうやって笑っていたほうがかわいいよ」  「ふふ。ありがとう」  私は立ち上がった。  「じゃあ、夕飯を作るから、フロリアも調子がよくなったら来てね」  「……ああ」  そう言うと、フロリアは目を閉じた。  ギイー、バタン  フロリアはああ言ってくれたけれど。  キスをしたフロリアのおでこは、予想以上に熱かった。  きっと、ただの疲れとか、体調不良じゃないような気がする。  胸に詰まった不安が息苦しくて、私はそっとため息をついた。  あれから数日経ったのに、フロリアが元気になる気配はなかった。  ……ううん、なんだか前より悪くなっているみたい。  私は学校と家事の時間以外は、ずっとフロリアにつきっきりでいた。  ずっと眠っていたフロリアが、ベッドの中で身じろぎをした。  「う……ん」  ゆっくりと目を覚まし、ぼんやりとした目で私を見つめる。  「フロリア、目が覚めた? 何かして欲しいことはある?」  「……いや、何も」  いつもだったら口から出てくる軽口も、ここ数日は聞いていない。  「そう……ね、ねえ、おでこに載せたタオル、新しいものに取り替えてあげましょうか?」  「いや、そのくらいは僕でも……」
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