第2章

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 フロリアは額のタオルも手にとって、ふうと息をふきかけた。  ところが。  フロリアは悲しそうにタオルを見つめて、それを私に渡した。  「……ごめんよ、やっぱり冷たいのと取り替えてきてもらえないかい?」  「あ……え、ええ」  私はあわてて立ち上がった。  ギイー、バタン  フロリア、前に私が熱を出したときには簡単にタオルを冷やしてくれたのに。  もしかして……そんな、まさか。  ギイ―、バタン  「お待たせ。ねえフロリア、あなた、もしかして魔力が……」  フロリアは少しだけ押し黙って。  「……うん」  やっぱり。  フロリアの魔力は、消えてしまったんだわ。  ……?  それじゃあ、フロリアはどうなっちゃうの? 魔力をなくしてしまった魔物は、いったいどうなるっていうの?  ……もしかして、魔力みたいに?  「ねえ、もう一つ頼みごとをしてもいいかな?」  「え、ええ、なんでも言ってみて」  「キスをしてくれないかい? おでこなんかじゃなく、ちゃんと」  「……」  私は、黙ってそっとフロリアにキスをした。  早く元気になって……そんな祈りを込めて。  「……よかった。 かなたがいてくれて幸せだったよ、僕は……」  「フロリアったら、いきなり何を言い出すのよ」  まるで、これが最後みたいじゃない。  だけれど、フロリアは笑いながらも真剣な目をしていた。  「今の言葉を、かなたにずっと覚えておいてほしくてね」  「そんな悲しいことは言わないで」  「ふふ。でも、僕は本当に幸せだったよ。だから、その証拠に……」  「え? 何、 フロリア」  「証拠……に……」  そのまま、フロリアは目を閉じ、続きを聞くことはできなかった。  私はそっとフロリアの隣にもぐりこみ、フロリアの手を握り締めた。  いっそう青白くなった顔を見て、ふっと涙が零れそうになったけど。  隣から聞こえる安らかな寝息を聴いて、ようやくこらえることができた。  ……また、数日が経った。  「フロリア……」  フロリアは、あれから一度も目を開けることはなかった。  たったの、一度も。  「フロリア、ねえ、起きて」  声をかけてみる。 聞こえるのは、少し苦しそうな寝息ばかり。  「フロリア、ねえ、ねえったら!」  体を乱暴にゆすってみた。けれどフロリアの反応はない。
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