第2章

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 「フロリア……ねえ、どうしちゃったの……?」  私は、その場にへたりこんで、ただ、黙ってフロリアを見つめていた。  学校に行っても授業にはぜんぜん身が入らない。  お昼も食べる気がせず、私はふらふらと図書室にやってきた。  「……智哉君」  いつもの場所には……智哉君が座っていた。  「来ると、思っていたよ」  「ねえ、智哉君、私はどうしたらいいの……?」  私は、せきを切ったように智哉君にフロリアのことを話した。  智哉君は柔らかな表情を浮かべて、私の話をただ黙って聞いてくれた。  「私には、もうどうすることもできないのかな」  言葉にして口から出した途端、それが現実になってしまいそうな気がして、ゾクッと体が震える。  私は、不安に締め付けられる胸を抑えるように、自分で自分の体を抱きしめることしかできなかた。  「……」  「……」  「……」  3人で静かに夕飯を囲む。  あんなに賑やかだった団欒が、ここ数日嘘のよう。  ……フロリアが、目を覚まさないから。  「……なあ」  ロイが、重苦しい雰囲気を壊すように口を開いた。  「俺、ユーゴとも話したんだけどさあ……」  「うん……フロリアのこと」  「え!? ふたりとも何か知ってるの!?」  何でもいい。フロリアが目を覚ますならなんでもするから……!  「フロリアの一族への罰は流刑だけじゃなくて、呪いもかけられたって噂があるんだ」  「呪い……?」  「おう。本当の幸せを手に入れると、消えちゃうっていう呪い」  「そんな……」  「けど、俺もユーゴも呪いで消えたセイレーンの話なんて聞いたことねえし」  「だから、ふたりとも迷信だと思っていた……」  「けどさ、最近のフロリアは、悔しいけどすげえ幸せそうだったしな」  「……もしかしたら、本当かな、って……」  「わかったところで呪いじゃ俺たちにはどうにもできないし……っておい!」  ロイの言葉を最後まで聞かずに、私は黙ってフロリアのもとへと駆けた。  「フロリア、フロリア、フロリア……!」  ギイー、バタン  「はあ、はあ、はあ……」  フロリアはベッドの上で眠っていた。……まだ、消えてはいない。  私はベッドの側に崩れ落ちた。  「よかった……でも」  私のせいだ。  私がフロリアを好きになったせいで、フロリアは呪いのために消えかかっている。  
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