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今なら、そう、今ならきっとフロリアを取り戻せる。
「んんっ……」
フロリアの唇にキスをする。
戻って来て、フロリア。
どんなことだって、どんなものだって、すべて私は受け入れる。
だから、帰ってきて。私のすべてを貴方にあげる。 だから、帰ってきて……。
精一杯の気持ちを込めて、ぎゅっと目を閉じた。
「………………んんっ」
身体の下で、身じろぎする気配。
「フロリア!」
「……唇だけじゃなく、君は涙さえも甘いんだね」
そう言って、私の頬を撫でる。
「フロリア、目が覚めたのね! 戻ってきたのね」
「お目覚めのキスは王子様からと相場が決まっている物だよ。それなのに、王子様の寝込みを襲って唇を奪うなんて……本当にいけないお姫様だ」
そう言って微笑むフロリアの顔色は随分良くなっていた。
「ご、ごめんなさい」
「謝ることもないよ。たまにはお姫様からキスをして貰うもの悪くないものさ」
相変わらずの口調も、依然と変わりがない。
「よかった……フロリアだ……ううっ……本当に本当に、フロリアが帰ってきたのね……ううっ」
次々に溢れだす涙。今度は嬉しくて、止まらない。
「そんな風に泣かれると、困ってしまうな。それに、どうせ泣くなら、ベッドの上よりも、僕の腕の中で泣いて欲しいよ」
フロリアはそう言って体を起こすと、私を抱き寄せる。
「さっきまで僕は、暗くて重い深海の底を漂っていたんだ。ずっと長いこと抜け出せなくて、もうダメかと諦めていたんだ……。 だけど、そんな時、君が見えたんだ。君の差し出す手が、光が見えた気がして……それに触れた途端、ここに戻ってくることが出来たんだ」
「ううっ……フロリア……」
その存在を確かめるように、フロリアの服をぎゅっと掴む。
「おやおや、僕はちゃんとここにいるんだから、もう泣きやんで、かなた。 そうしないと、君の鼻が心配だよ」
慌てて、下を向く私。
どうしよう、ずっと泣いていたからすごい顔になっているかもしれない。
こんな顔、恥ずかしくて、フロリアに見せられないよ。
「どうして下を向くの? 久しぶりに君のかわいい顔を見せてくれないかい?」
「だめだよ、こんな顔見せられないもの……」
「僕が見たいってこんなにお願いしても?」
そう言うとフロリアは私の耳にキスをした。
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