第1章

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南房総の館山の町はずれの寂しい道を、その女は歩いていた。左手には鬱蒼とした藪が繁り、右手には花畑が広がっていた。所々に立つ外灯の灯りだけが、わずかに暗い夜道を照らしていた。 その時、女の後ろから1台の乗用車が近づいてきた。その車は、女の脇をゆっくり走りながら窓を開けた。 「こんな遅い時間に一人で危ないよ!乗っていかない?」 男の声がした。 「結構です!」 女は断った。 男は鍬田と言い、定職もなく、SEX相手の女を物色していた。鍬田の車は、しつこく女につきまとった。やがて、鍬田は車を停めると嫌がる女を無理矢理、車に押し込んだ。鍬田は女を乗せたまま、岬のほうに車を走らせた。そこは外灯も無く、人気も無い寂しいところだった。鍬田は車を停めると嫌がる女を車から引き出した。そして、女が走って逃げようとするのを追って捕まえると、そのまま、その場に押し倒すと、力ずくで犯そうとした。 女は、 「やめて!やめないと警察呼ぶわよ!」 そう言って抗った。 しかし、男の鍬田の力には逆らえなかった。鍬田は、事を終えると、口封じのために自分のズボンのベルトで女の首を締めて殺した。 鍬田は、女を殺害すると急いで現場を離れようとして、車に乗り込むとエンジンをかけようとした。 ところが、いくらエンジンをかけようとしても、どういう訳かエンジンはかからなかった。 「チェッ!」 鍬田は、仕方なく、証拠を消そうと思った。鍬田は女の死体の足を掴むと、暗い藪の中に引きずるようにして入って行った。辺りには外灯もなく、月明かりも、藪の繁みの中までは届かなかった。 その時、女の死体を引きずっていた鍬田は突然、崖から足を踏み外した。鍬田は女の死体もろとも、崖から下の波打ち際まで落ちて行った。鍬田は意識を失った。 それから、どのくらいの時間が経ったか?鍬田は意識が戻った。隣には女の死体があったが、落ちた拍子に額を割ったようで顔が血にまみれていた。鍬田が月明かりを頼りに辺りを見回すと、波打ち際沿いに上に上がるのは無理だとわかった。
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