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「さてと。上級女官の方々に、ここまでして頂いたんだから、私達が何とか持ちこたえないとね」
「はい。これまでに、それなりに相手の人数を減らした筈ですし、戦闘能力を削ぎ落としたと思いますので」
「だけど……、一言言って良い? 今夜の王宮内の警備責任者は、黒騎士隊副隊長だから、あなたの夫よね。これだけの騒ぎになってるのに、まだ誰も駆け付けて来ないなんて、怠慢も良いところだと思うんだけど?」
そう言いながら、スラリと自身の剣を鞘から引き抜いたリディアに、アルティナは下手な弁解などはせず、大真面目に頷いた。
「同感です。事が終わったら、一言『甲斐性無し』と罵っても、罰は当たりませんよね?」
「一言どころか、盛大に罵ってやりなさい。全面的に私が許すわ」
「はい、副隊長」
互いに正面のマルケス達から視線を外さないままの会話で、アルティナが抜いた剣を構えると同時に鳥が去り、無傷の者が全く見受けられない男達が、怒りの形相で剣を振りかざしながら突っ込んで来た。
「そこをどけぇぇっ!!」
「ぶっ殺してやる!!」
「退くわけ無いでしょう!?」
「本当に、救いようの無い馬鹿揃いね!!」
そして一撃目を剣で受け止めたリディアとアルティナは、それを払いのけた後は、互いに背中合わせになりながら、マルケス達の猛攻を凌ぐ事となった。
「邪魔だ、退け!!」
「ふざけやがって!」
互いに剣を抜き合って対峙した面々だったが、結構な広さがあるとは言え、やはり室内。しかも先程までグレイシアが色々な物を置いていた大きなテーブルが、奥へと続くドアから中途半端に離れた場所に置いてあった為、行動範囲に制限があるマルケス達は、どうしても一気に複数人でアルティナ達に攻めかかれなかった。
人数の多さを活かせず、背中合わせに立って一人ずつ対処しているアルティナ達を放置し、手斧を持っていた男がドアに向かったが、それを振り下ろそうとした所で、背後からアルティナが彼に向かって鋭利な刃物を投げる。
「おっと、そうはさせないわよ!」
「ぐあぁっ!」
短刀ともナイフとも違うそれは、アルティナが使い込んでいた物であり、寸分違わず首筋にそれを打ち込まれた男は、首を押さえながら床に崩れ落ちて微動だにしなくなった。
それを見た他の男達は、さすがに顔色を悪くしたが、益々破れかぶれの様子で、彼女達に切りかかってくる。
「ちっ! 無駄な抵抗しやがって!」
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