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「無駄な抵抗? どこがよ!」
「さっさと、そこをどけ!!」
「邪魔なら、力ずくで退かしてみたら!?」
背中合わせのまま、剣を振るって打ち合っていた二人だったが、不意に背後で鈍い音がした為、アルティナは反射的に背後を振り返った。するとリディアが腕を打たれたのか、剣を取り落としており、更にそんな彼女めがけて剣を振り下ろしかけている、男の姿が目に入った。
「……つぅっ!」
「貰った!」
「副隊長!」
手元にもう武器が無かったアルティナは、咄嗟にしゃがみ込み、先程室内に乱入して男達を襲ったものの、斬られて床に横たわっていた鳥の死骸を掴んで、その男の顔をめがけて投げつける。
「っ、ちっ! 何しやがる! この女!」
「副隊長!」
さすがに動揺して男が手を振りかざす間に、リディアは何も言わなくとも剣を拾い上げ、逆に男に斬りかかった。
「ぎゃあぁっ! うあっ!」
それは見事に男の利き腕を深く傷付け、リディアは邪魔だとばかりに、うずくまった彼を足で蹴り倒す。
「ありがとう、助かったわっ!」
「どういたしまして!」
そして二人を戦闘不能状態に追い込んだものの、まだ自分達を狙っている面々を睨み返しながら、リディアは盛大に悪態を吐いた。
「全く、いつまで手こずってるのよ、あんたの亭主は!?」
「全くだわ。全員倒した後で、のこのこ顔を出したら、絶対離婚してやる!」
「当然ね!」
怒鳴り合いながら、踏み込んでくる男達の剣を受け止めつつ、アルティナ達がドアを死守していると、どうやら廊下にいたらしい見張り役らしき男が、血相を変えて室内に駆け込んで来た。
「おい、新手が来て、ぐわあっ!」
そして室内に駆け込んで来るとほぼ同時に、その男は盛大に背中を斬られて床に倒れ込んだ。その背後から、鬼神の形相のケインが、部下らしき近衛騎士を十人程従えて、足音荒く入室してくる。
「アルティナ、無事か!?」
「遅い!! 下はちゃんと、制圧しているんだろうな!?」
咄嗟にアルティンの口調で叫んでしまったアルティナだったが、ケインは僅かに目を見開いただけで、何事も無かったかのように説明した。
「ああ、ここに来るまでに、廊下に怪我をして倒れていた者も含めて、全員捕縛した。貴様らも、これ以上の無駄な抵抗は止めろ! 死体になりたい奴だけ、遠慮なくかかって来い!! 後腐れ無く、あの世に送ってやるぞ!!」
「くっ……」
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