第1章 嵐の前の静けさ

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「それで連絡鳥を使って、外部と必要な連絡は取っているんだよね?」 「ええ。それは問題無く。予想外に多くの鳥が庭園の外縁の大木に巣を作ってくれて、連絡鳥の行き来が目立たなくなって助かっています」  それを聞いたクリフは、そんな事態を引き起こした原因の代物の事を思い出して、笑いを堪えた。 「ああ、例の“あれ”で呼び寄せた鳥か」 「ええ。例の“あれ”です。あの類の嫌がらせは従来からあったみたいで、飽きもせず途切れずに贈られてくるので。有効活用の最たる物ですね」  ユーリアも苦笑の表情になったが、ここでクリフが忌々しげな表情になる。 「一人や二人じゃ無いのだろうとは、想像が付くが……。そんな非生産的な事を延々と続ける人間の、精神構造が理解できない」 「クリフ様は頭が良いですから」 「どうもありがとう。ところでマリエルは元気にしているかな? 人に仕えるなんて事は、これまでした事が無いし、入ったばかりの頃はともかく、そろそろ飽きたり癇癪を起こしていないか心配なんだが」  ついでのように話題を変えたクリフに向かって、ユーリアが少々呆れ気味の視線を向けた。 「クリフ様……。兄としては、真っ先に尋ねるべき事ではないんですか?」 「確かに、薄情と思われても仕方がないな。だが何となく、マリエルはどこでも上手くやっていける気がするから」 「確かにお元気ですし、上手く務めていらっしゃいますよ? 女官と言っても侍女の様な身の回りのお世話をする訳ではありませんし。王女殿下に好かれてしまって、最近は専ら遊び相手になってますね」  苦笑いしながらユーリアが説明すると、急にクリフが不安そうに呟く。 「マリエルの精神年齢が、四歳児と同レベルで無い事を祈るよ」 「それはありませんから」  さすがに笑って否定してから、ユーリアはつい先程聞いた話を口にした。 「それから、今までは色々バタバタしていたり、覚える事が沢山有って無理でしたが、そろそろ交代で休暇を頂けそうです」 「へえ? そうなんだ」 「はい。そうしたら泊まりがけで帰れますし、その時にご本人から直接詳細を聞いてみて下さい」 「分かった。それじゃあ」 「はい。ありがとうございました」
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