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喜色を露わにして問い返した淳に、美実が少々照れくさそうな表情になって視線を合わせながら頷くと、彼は一言漏らしてからいきなり力が抜けた様に座卓に突っ伏した。
「ちょっと! どうしたのよ!?」
「すまん。安心したら、一気に疲れが出た」
「何をやってるのよ……」
呆れて溜め息を吐いた美実だったが、ここで言っておかなければならない事を思い出して、控え目に声をかける。
「あの、一応言っておくけど」
「分かってる。取り敢えず子供の父親として藤宮家には認めて貰うが、すぐに入籍云々についてどうこう言うつもりはない。寧ろずっと事実婚のままでも、良い気がしてきた」
「そうは言っても!」
自分の台詞を遮って淡々と主張してきた淳に、美実は思わず声を荒げたが、ゆっくりと上半身を起こした淳が真顔で話を続けた。
「言っておくが、俺の立場が悪くなるからなんて、見くびった事は言うなよ? これでも事務所では若手ホープの一人なんだ。と言うか、色々な事例を扱う弁護士事務所なんだから、色々なタイプの弁護士が居たって構わないだろ」
「この間に何か色々、変に開き直っちゃった?」
「当たり前だ。この前お袋がやらかした事については、美子さんに詫びの入れようも無いし、俺から美実に『お袋と上手くやってくれ』なんて言うつもりも無い。もう放っておけ。そして、それはそれとして割り切れ。なるようにしかならないからな」
淳がそうきっぱり言い切ったところで、美実が苦笑しながら応じた。
「……うん、そうね。後々、機会があったら、仲良くしてみる事にするわ」
「それで十分だ。それでだな」
そこでスパーンという高らかな音と共に襖が引き開けられ、涙目の美幸と美野が客間に乱入してきた。
「うわ~ん! 子供の名前、無事決定おめでとう~! 大学が内部進学で本当に良かった! 本格的な受験だったら、気になって勉強が手に付かなくて落ちてたもの!」
「美幸! あんたはそれ位で落ちる様な勉強しかしてないの!? でも本当に良かったです! もう一時はどうなる事かと思って、かなり胃壁をすり減らした気がします!」
どうやら最初からずっと、室内の様子を襖の向こうから窺っていたらしい二人の感極まった叫びに、少し良い雰囲気になりかけた所を邪魔されても、淳は気を悪くしたりはせず、逆に苦笑しながら謝罪した。
「あんた達……」
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