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図書室の騒動から二日後。今日からまた違う謎に取り組もうと集まった科学部だったが、どうも様子がおかしいメンバーが一人いた。化学教室に妙な空気が流れる。
「ねえ。どう考えてもおかしいよね」
興味に耐えられなくなった千晴が桜太の肩をシャーペンで突っついてこっそり訊く。
「そうだよな。どうしたんだろ?」
桜太も合わせるように小声で同意すると、そっと後ろを見た。二人からちょっと離れた後ろの席にいるのが問題の人物だ。
「あの中沢先輩が奇行だぞ?食当たりかな?」
桜太たちの横でも詮索が始まった。今のは楓翔の呟きだ。
問題の人物はなんと科学部一の常識人、莉音だった。莉音はどういうわけかボールペンを見つめたままぼんやりとしている。そのボールペンは昨日行ったオープンキャンパスで貰った代物らしく、大学の名前が印字してあるものの取り立てて変わったものではない。しかし莉音はそのボールペンを見つめては溜め息を吐いて物思いに耽っているのだ。
「あれはよっぽど大学を気に入ったということかな?」
もう耐えられないと迅が桜太に向けて消しゴムを投げた。どうにかしろと訴えているのだ。
「いや。それにしては変だよ」
仕方なくこっそり集合する面々だ。しかし物思いに耽る莉音の目には入らないらしく、集まっても何も言ってこない。それどころか周りからメンバーが消えたことにも気づかない様子だ。
「これには俺たち三年も困っていることなんだよ。あの莉音が奇行だぞ?いくら変人パラダイスの科学部に属しているとはいえ、莉音はどちらかと言えば普通だ。それなのにボールペンを見つめたままだなんて」
亜塔は真剣に嘆いているのだが、その言葉が恐ろしい。いつの間に科学部は変人パラダイスになったのか。しかし莉音がおかしいと調子が狂うのは誰もが同じだ。
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