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七不思議の解明よりも気になる謎登場に、科学部は騒然となったままだった。
「中沢先輩が行った大学ってどこですか?」
優我がスマホを構えて質問する。今は丁度莉音がトイレに出かけているのだ。そのついでに図書室の状況を確認して来ると言っていたので、詮索するにはもってこいだった。
「この近くの大学としか聴いてないな。そう言えばいつも大学の名前は教えてくれないんだよ」
芳樹は水槽を撫でながら首を傾げる。理学部なんて少ないから隠してもすぐばれそうだと、今まで詮索しなかったのだ。しかし近くという情報が嘘だとどうしようもない。それに世の中には理工学部というのも存在するのだ。
ちなみに水槽を撫でているということは、今日のカエルはお気に入りとなった証拠だった。桜太は嬉しそうにこれを持ち帰る芳樹を想像してしまう。いつもはスケッチして野に返すのだが、気に入ると繁殖まで試みるのだ。
「女性で物理学科の教授か。結構絞られそうだけどな」
楓翔が何気なく呟く。そこではたと桜太は止まった。
「この近く。物理学の教授?」
桜太は呟くうちにある人物が頭に浮かんでいた。しかし莉音が惚れるという部分がどうにも納得できない。けれども年上だからは通用しないのだ。
「桜太。何か解ったの?」
横にいた千晴が今にも襲いかかって来そうな視線を向ける。恋敵が教授とあって心中複雑なのだ。
「い、いえっ。何も」
ぶんぶんと首を振って桜太は返事をする。それはもう眼鏡が遠心力で飛んでいきそうな勢いだ。
もしも桜太の思い浮かべた人物が惚れた相手ならば色々とややこし過ぎる。千晴に殴られるくらいでは済まない話だ。
「隠していたら承知しないからね」
千晴は追及しなかったものの目は怖いままだ。それは桜太の否定の仕方が怪し過ぎるからで、今のところ殴らないというだけだ。
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