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ついさっきまで、メールで会話をしてたのに、携帯はコールするだけで、電話が全然繋がらない。声を聞くのは、殆んど諦めていたが、もう一度、掛けてみた。
これは、繋がった。
彼女の小さな声が、
「もし、も、し、、、今、話せる状態じゃ、い、、」と言い、電話が切れた。
もう1度、掛けてみると、今度は意味の解らない雑音の後、ブッリと切れた。
何が起こっているのかが、理解できない。大丈夫だろうか。もう1度掛け直すと、今度はコールもせず、留守録にもならず、ただ、切れる。
「消えたくなるんだ」
彼女の言葉が、頭の中を駆け回っている。イライラする気持ちを抑えながら、その後、何度か電話を掛けてみたが、状況は同じだった。
通話ボタン、そして、エンドコールのサイン。
私は、家から5分位の所にある川原の公園にいた。そこは湧き水の公園と呼ばれているが、ただ単に小さな橋が1つあるだけの公園で、その橋の上から水面を眺めていた。
川の本流と泉からの湧き水が交わる橋の下の水面が、大きくざわついてる。よく見ると、小さな子供のイルカが泳いでいる。そのあたりには、親や兄弟らしいイルカもいる。私は急いで、携帯をカメラモードに切り替え、その子供イルカの写真を撮り、彼女に送った。
15分後位だろうか、やっと彼女からの返信が届く。
「イルカ?可愛い、ありがとう。」
私は急いで、彼女の返信に
「話しできないかな?」と送り返したが、返事はなく、電話も、まだ同じ状態で繋がらないままだった。
煙草に火を点け、足元で戯れているイルカの家族を見ていた。
”もう、話したくない”って事なのだろうか?当たり前の事だな、彼女には家族が、子供がいるのだから。
煙をゆっくりと吹かしながら、下流の方を見ると、大きな水のざわつきが、ゆっくりと、橋に近づいてくるのが見える。その瞬間、橋の下にいるイルカの数がいきなり増えた。10頭以上はいるだろうか。
突然、水面に矢印のような形の波ができ、その波は、下流のざわめきに向って、1直線に進む。そして、大きく円を何度か描き、また矢印の波を立てて、橋の下に戻って来た。
すると、橋の下に集まっていたイルカは、姿を隠してしまい、また、親と小さな子供イルカだけになった。
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