し、死神を……

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嘘だろ……。 電柱に助けを求め、腕をつく。 は、腹が……。 死神を 食べ過ぎた 死神を 食べ過ぎた 死神を 食べ過ぎた 頭の中をイカレタメロディーがぐるぐるする。 体のあらゆる毛穴から、冷たい汗が流れる。 噴出しそうだ。 尻の穴に全身全霊力を込めた。 原因はアレだ。 死神を食べ過ぎた。 早く、家に、戻らなければ。 民家の壁を這うように、アパートへ急ぐ。 死神が大好物だ。 だが何でも度を越すと、害になる。 死神が大好物!? その反応は見慣れた。 東京で死神が大好物だなんて言うと、引かれる。 百人が百人頭がおかしい奴を見る目で、俺を見る。 だから俺も同じ目を向けるのだ。 アノ死神を食べる奴がいるわけないだろ。 瀬戸内海沿岸にある小さな村が俺の地元だ。 地元では、死神と呼んで 親しんでいる。 子供の頃からそう呼んでいるから何の違和感もない。 東京の奴は、由来をしつこく聞いてくる。 由来なんて気になったことはないから、そんなものは知らないと言ってやる。 死神はうまいぞ。一度食べてみてくれ。病み付きになる。 キューと内臓を抓るように、腹が締め付けられる。 息が上がる。 乾いた歯に唇が張り付く。 食いしばった歯が震えている。 死神を食べたばっかりに……。 母さんが死神を送ってくるから……。 死神がこの世にあるから……。 恨みつらみが込み上げる。 あの角を曲がれば、アパートが見える。 あと少し、もう少し、自分にエールを送る。 角を曲がりかけたとき、一段と腹が締め上げられた。 ここまでか……。 地べたに崩れ 落ちる俺の目に、アパートが飛び込んできた。 グッと足を踏ん張り、最後の力を振り絞ってむき出しの階段を四本足で駆け上がる。 体当たりでドアを開け、トイレに駆け込んだ。 ジャー。 無事終了。 トイレから出た俺は、六畳一間に大の字に寝転ぶ。 もう、二度と、死神は食べない。 固く心に誓う。 手元のチャンネルを取り、テレビをつけた。 二時間後。 あー腹減った。 そういえばまだ冷蔵庫に死神が残ってたっけ? 起き上がり、冷蔵庫に手を掛ける。 やっぱり、俺は、死神が好きだ。
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