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「練習試合をしたいと言っている高校があるんだが」
急に昼休みに僕を呼び出した監督は僕にそう伝えた。
「本当ですか?」
僕は驚いて思わず聞き返してしまった。監督がそんな話を持ってくる日がくるなんて微塵も思っていなかった。
「ああ本当だとも」
監督はのんびりとした口調で話す。
「やった。ちょうど練習試合をしたいとみんなで話していたところなんですよ」
「それはちょうどよかったな」
「相手は一体どこなんですか」
「東京大陰星高校だ」
監督は相変わらずゆっくりとした口調である。
「え?」
「東京大陰星高校。そこがうちと練習試合をしたいと言っている」
僕は名前を聞いてもピンとこなかった。
「あのーそこって強いんですか?」
「わしに聞かれてもな」
監督はサッカーに関しては知識は無きに等しい。
「猫田はわからんのか」
「正直、わかりません」
「今時はスマホ? で調べられるだろう。わしはパソコンも扱かえんけんね。調べてくれ」
「わかりました」」
東京大陰星高校、頭の中でもう一度この言葉を反芻した。聞いたことあるような無いような。とりあえず強豪ではなさそうだ。
「明日、もう一度連絡がくるらしい。週末の土曜日に会場は三星高校でどうだ」
「いいと思います。やりたいです」
即決だ。数少ない練習試合のチャンスを逃すわけにはいかない。
「じゃあそのように返事をしておく。話はそれだけ」
僕は職員室を出た後にすぐに竜崎の元へ向かった。
「竜崎」
名前を呼ぶと竜崎は僕に近づいてきた。近くにいた大関も「えーなになに?」と言いながらずかずかと近づいてくる。
「喜べ。練習試合だぞ」
「本当かよ」
「ちょーうけるんだけど」
大関がケタケタ笑った。
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