第1話 試合

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返ってきたテストの結果は順調だった。  僕はテストの用紙を見て僕はホッとした。  計画的に勉強した甲斐があったと思う。僕にとって勉強は努力した分だけ成果がでる。だからやりがいがあった。頑張った分だけ結果が出ないことが多い中で不思議と勉強だけは結果が出た。ボコボコになった僕の自信を癒す最高のドラッグだ。勉強以外はどうなのかって? そりゃあ、僕は運動部に所属しているのにもかかわらず体育では帰宅部と遜色ない活躍だし、はたから見れば運動しているような体つきでもない、バスケをすればどっちがボールかわからないこともある。うまれながらにして運動ができないのだ。  典型的な運動音痴なのだ。  小学校の頃は運動ができないことなんて微塵も気にしなかった。でもサッカーにのめり込んでいくうちに運動ができないことがこんなにも苦しいことで日常を悲しいものにしてしまうのか、と思わされた。運動ができないことで僕はなにかしら欠陥がある人間、という烙印を押されたような気がして嫌だった。その烙印を覆したくて僕は狂ったようにサッカーの練習に取り組んだ。それでも烙印は僕についたままである。  僕の運動能力の話はここまでにしておこう。  とりあえずしばらくはいい気持ちで過ごせそうだと思い、答案用紙を物で溢れている机の中にしまった。  机にぼうっと腰掛けていると体がうずうずした。僕はしばらくそのうずうずを感じながら机の上に座る。時計にちらりと目をやると部活が始まるにはまだ時間があった。この間に挟まれた時間が好きだった。これからプレゼントを開ける気分に近いのかもしれない。  たっぷりと休憩をとった僕は荷物をカバンの中へ入れて椅子から立ち上がった。
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