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僕が着替えをしている部室のドアがバーンと開いた。ドアが壁にぶつかる音が室内に響く。部室の埃が中を舞う。配慮のない開け方をするのはこの部活でただ一人しかいない。
「ういっす」
僕が言った「ういっす」より二倍くらいの大声で石嶺は言った。黒くやけた肌に丸坊主の髪。風貌は野球部そのものである。
「ここはサッカー部だぞ。野球部の方はおかえりください」
「おい、部活間違えてるぞ」
僕と竜崎の攻撃にも石嶺はひるむ様子は全くない。
「俺はサッカー部だ」
石嶺はカバンをベンチに置いた。どすんという大きな音がなる。
「野球部かと思ったわ」
「石嶺のカバンには一体なにが入ってんの?」
石嶺の大きなセカンドバックは何が入っているのかと思うくらいパンパンである。
「トレーニグ道具だ。隙間時間をうまく使うために入れてある」
「重いだろ」
「それもトレーニングだ。あとは大人の雑誌だ。隙間時間をうまく使うために入れてある。ガハハ」
石嶺は豪快に大きな声で笑った。そんな豪快なところが石嶺のいいところでもあり、うざいところでもある。
「上野まだ着替えてないのか、早く着替えろよ」
石嶺がまだ制服姿の上野に向かって言った。上野はいつのまにか本に集中していた。石嶺に突然話しかけられて驚いた上野は本を落す。「うん、着替える」と上野は静かに言った。
僕は二人に「早くこいよ」と言ってサッカーボールを持って部室を出た。
「竜崎、またお菓子食べんのか。ちょっと俺様にもわけろ」
「うるせーな。さっきもジャージに言われたよ。ほれ」
「ガハハ。ありがとう」
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