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「竜崎も早く着替えろよ」
「はーい。キャプテン」
竜崎がカバンからくたびれた練習着を出した。
グランドを見渡すと誰もいない静かなグランドが一望できた。心がざわざわとざわつく。
三星高校の部活は余り盛んではない。着替え終わった上野もグランドに出てきた。
「大関は来てないのか?」
「うん」
ここで言う大関とは決して力士のことではない。うちは相撲部ではない。大関とは唯一の女性マネージャーのことだ。百瀬アイという大変、可愛らしいお名前をお持ちであるが僕らはそれを無視して大関と呼んでいる。大関はアクエリアスとお水と混ぜて自分で飲んだり、スマホをいじったりしていて僕らをサポートしてくれている大変優秀なマネージャーだ。
ふぅとため息をついて僕はコーンを出し始めた。
僕が水を入れたりコーンをだしたりしていると石嶺がグランドに出てきた。石嶺は「グランドは広いなぁ」なんていいながらグランドを走り始めた。こちらのことはおかまいなし。上野は静かにコーンを運んでいる。上野、これ以上コーンはいらないよ。
練習の時間になりほとんどの部員が揃った。誰が来ていない確認する必要もない。大体遅れてくるやつは決まっている。安藤だ。
「安藤のやつはまだか?」
僕が同じクラスの竜崎に聞いた。
「あいつ、俺より先に教室出ていたけど」
「毎度のことだ」
「とりあえず練習を始めよう」
みんなで一列になって走りだす。
安藤抜きで練習を初めてから三十分が経過した。安藤のやつ、遅いな、なんていいながらジョギングを続ける。体も温まってきたころ安藤が遅れて練習にやってきた。練習に遅れてもまったく悪びれる様子はない。飄々と「遅れてすまない」と言ってグランドに入ってきた。
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