魔道具の恐怖

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僕は強めの力で扉を押した。 扉は、何故かバラバラに砕けてしまった。 中の泣き声はその衝撃で止まった。 僕は魔力球を使って周囲に舞い上がった苔を、魔力球に吸い込ませる。 直ぐに視界がクリアになる。 そして、僕達の目の前には、全く普通に苔に塗れる事も無く床にへたり込んで泣き崩れている若い男性が居た。 泣き腫らした目はつい今しがたまで泣いていた様子が見て取れる。 その若い男性は驚愕の表情で僕を見た。そして言った。 「お、お前は誰だ!何故、何とも無いのだ!」 あれ?普通に声を出してる。出来るの?何で? 僕は、ガイを見た。 『こいつ・・・・・・毒属性を持ってるな。普通人間の持てる属性じゃ無いんだがな。何故持つようになったのかは・・・・・予想は出来るな』 『え?ガイ?』 僕が思わず魔物の言葉でガイに問い掛けていた。だって、僕は話せるからね? ガイは僕の肩から飛び降りて男に近寄ると言った。 「おい。聞こえるか?俺様の声が聞こえるだろ?返事しろ」 ガイの言葉に、驚きに目を見張り男は大きな声を上げた。 「な!猫だと!どういう事だ!猫如きが何故話せる!貴様の使い魔か!どういう事だ!」 僕は溜息をついて言った。 「そんな事よりも、何が有ったのか聞かせてはいただけませんか?僕は依頼を受けて此処に来ているんですよ」 声を出してみて、思ったよりもずっとスムーズに普通に声を出せた事に驚きながら僕は言った。 男は、僕とガイを交互に見て言った。 「煩い!お前達は、私の屋敷に無断で侵入しているのだぞ!分かっているのか!直ぐにでも捕らえさせて殺す事も可能なのだぞ!分かっているのか!」 捕らえさせて殺すって・・・・・此処には人間は一人も居ないんだけど? 気が付いてないのかなあ。 男は、ヨロヨロと立ち上がって周囲を見回して驚いた表情をする。 「な?なんだ?これは?どうなってる?」 周囲は壁も家具も何もかも苔に覆われている。それも何種類もの苔に。 その全てが毒の苔だ。普通には存在するはずも無い苔。 深い森の奥でのみ存在する苔。今まで気が付いて無かったんだ。 僕は周囲を魔力球で確認して言った。 「ああ。もう侵食が随分進んでるね。ガイ。戻って」 ガイは僕の言葉に受けて頷いて言った。 『ああ。時間の問題だな。任せたぞ』 そう言って、僕の肩に飛び戻ったガイ。 あ。やっぱ。僕に丸投げなんだ。
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