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音も無く静かに崩壊していく周囲を見守っていると、全く動きのない筈の場所に僅かな動きが見え始めた。
「ん?あれは?」
僕が思わず声を上げた。
そこには、苔だらけの中からあちこちで、モコリっと盛り上がりその膨らみの中から出て来た者が居た。
呆然とした表情で周囲を見回すのは、おそらくその街に住んで居たのだろうと思われる人?。
そして、他にも次々に盛り上がり、苔の中から起き上がる人?達。
元は、そこで暮らしていた普通の人?達だったのだろうが、一つだけ元と違っているのは、目にも鮮やかなピンク色の髪の毛や他の全身の体毛。
明らかに何かの影響を受けている。第一、一度は間違いなく死んでいるのだから。いや、死んでいた筈だった。
なのに、何がどうして次々に起き上がって居るのか?全員が鮮やかなピンク色の髪の毛で、身体には緑色の水草のような葉っぱで出来た服のような物を、全員が着用している。
足には何も履いていない。一体何が起きたのだろう。
僕も、唯一人生き残って居た彼も呆然と、次々と起き上がる人?達を見つめていた。
全ての建物も何もかもが無くなって、更地のようになっていて、地面を一面に覆う鮮やかなピンク色の苔や緑色の苔が生えた場所から姿を現わす人?達。
沢山の人?達が起き上がって呆然と周囲を見回している。僕はガイの方を見た。ガイも渋い表情してる。
「ガイ?」
僕が声を掛けるとガイは僕を見て言った。
「おそらく・・・・・推測でしかないが、そいつのつけてる魔道具は相当にそいつの事を気に入ってるんだろうな。だから、そいつの命を奪う事もせずに、まあ・・・・・暴走は止むを得ないが、それでもそいつが悲しんだ。滅茶苦茶な。
だから、命を奪って自分に取り込むんじゃなく、形を変えてこの環境で生きていけるようにしやがったんだ。人で有りながら人じゃねえ。半分魔物のような状態だな」
ガイの言葉に、驚愕の表情をする男性。
「な!なんだと! それはどういう事だ!」
「どういう事も何も、そのまんまじゃねえか。見て分かんねえのかよ。お前は。馬鹿なのか?あいつらは、明らかに人だった時の記憶を持ってる。なのに、こんな猛毒の場所で確実に生きてやがる。
だが・・・・これは・・・・ひょっとしたら、ひょっとするぞ?」
「「え?」」
ガイの言葉に、僕も男性も不思議そうに声を上げる。
すると、僕の頭にガイの尻尾が叩きつけられた。
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