『ムゲン王と呼ばれた男』

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―――――― ――― 「ちょっと!? アンタ、何してんのよ!? やみくもに攻撃すんな!」 アタシが索敵のため少し目を離した隙に、この脳足りんのパイロキネシスは火柱をそこらに立ち上げていた。 近付いて冷静にさせようと思うも、アイツの周りが熱すぎて近付けない。 苛立って舌打ちすると、パイロキネシスは、 「アァ!? お前こそさっきからキョロキョロウロチョロするだけで、見ててイライラすんだよ! さっさとあいつら焼いちまえば終わりだろうが!」 なんて言いながら、火柱を立ち上げるのをやめない。 「だからって、そんな目立つやり方したら誰かに……!」 「誰かにだぁ? 見られたら困るってか!? 困りゃしねぇだろ! ここは周りが皆トクベツだ! 何も隠すことなんてありゃしねぇ!」 パイロキネシスは、心底楽しそうに炎を撒き散らす。今までの鬱憤を晴らすかのように。 「ここなら、今までみてぇ謎の組織にビビって隠れることもねぇ! 俺が能力を使う度に現れやがったあのクソ博士共も! ここなら現れなかった! 能力抑制電波もない! 自由なんだよ俺たちは! ここならよォ! ヤりたかったことなんでもできるぜ!」 いや、楽しそうなんてものではない。狂喜乱舞といった感じだ。抑圧されていたもの、全てがはじけ飛んだといった具合だ。 ……アタシはこいつがただの脳足りんかと思ってたけど、実は頭がプッツンしちゃった奴だったのね。 そう思ったが、このパイロキネシスの気持ちが少し分かってきてしまっている。さっきの言葉を聞いて、感化されてきている。 こいつにも、分かりやすい、いかにもな過去があったのだろう。 迫害、敵対、弾圧。能力持ちの、いかにもな人生。 アタシだって、似たようなものだったし。今だって、とっさに魔法を使うときは周囲が気になって仕方ない。 でも……。 「……確かに、そうね。どうにもアタシは逃亡生活が長かったから、ブッ放すってのに抵抗があったけど……」 今は、違うのね。
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