『ムゲン王と呼ばれた男』

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「アタシはアンタが脳足りんだって思ってたけど、今はアンタのが正しい気がしてきたわ! 今までは『教団』の下っ端に能力自慢しながら、ネチっこく凍らせるのが一番気持ちよかったけど……!」 今なら、もっと気持ちよく暴れられるのね! アタシは全方位に、寒波を放つ。肌が粟立つ粉雪を、斥候として向かわせる。 600メートル程寒波が拡がった時、右斜め後ろの粉雪が溶けたのを感知した。 「見つけたァ!」 特大の氷塊を造り出し、そこに叩き込む。轟音と共に、土埃が噴き上がる。これは、無傷じゃいられない。 嗚呼、さっき、あのハッタリ野郎とサキュバスに能力自慢してたのが馬鹿らしい。さっさとこうやって、圧倒的な力で蹂躙すれば良かったんだ。 これからは、もっと上手く、気持ちよく暴れてやろう。 「おい、あそこにあいつらいたのか!? お前が勝手に勝負決めてんじゃねぇぞ!」 「うっさいわね、せっかく余韻に浸ってるのに……。次の勝負で頑張んなさいよ」 アタシは地面に突き刺さった氷塊に近付く。あいつらはどうなってるのか見てやろう。普通の人間なら死んでるけど、まぁここにいる奴ってんなら、大丈夫でしょ。 「アタシには勝てなかったけど」 ククク、と笑いがこぼれる。 氷塊まであと300メートルくらいまで近付いて、ようやく土埃が晴れてきた。 どんな恰好で転がっているかと思って目を凝らすと、そこには……。 「……なに、これ。ヒビ……?」 氷塊の内側に、一直線のヒビの線が走って……。 「いや、これ、ヒビじゃない……。氷の内側に、一直線の穴が空いてる!?」 それは、まるで通路のようだ。人二人、通れるくらいの、上へ伸びる直通通路。 アタシは、周りを見渡しあの二人を探す。 氷塊の下、いない。右、いない。左、いない。上……。 「クックック、柔い氷じゃ」 いた。
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