17人が本棚に入れています
本棚に追加
――――――
―――
クロエは僕の人差し指を引っ掻き、一筋の血を流させる。痛みはなかった。クロエが傷付けるのと同時に何かしてくれたらしい。
クロエは恥ずかしそうに、僕の指に舌を這わし、咥える。
そして、
「…………ッ!!!」
ズズズズズと、何かが身体の内から抜けていく感覚に襲われる。脳が甘く痺れるようだ。不快でも苦痛でもないのが、救いであり、恐ろしくもある。
と思っている内に、クロエは僕の指から口を離した。時間にして一秒ほど。それで十分だったらしい。
僕を吸精したクロエは、一瞬の痙攣の後、闇色をまだらに纏った。
「アァー……これは……たまらん……。力が漲り、馴染む……。生まれてからこの……魔力を纏っていたかのようで……気持ちがいい……」
どこか遠くを見つめ、恍惚とした顔でクロエがそう呟いた時、粉雪が僕らを包んだ。
攻撃か、と身構えた次の瞬間。僕たちは影に覆われた。
見上げると、特大の氷塊が僕たち目掛けて降ってきた。
僕がクロエに助けを乞う声を発する間もなく、
「了解じゃ。言われるまでもない」
最初のコメントを投稿しよう!