『ムゲン王と呼ばれた男』

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「くふっ、くふふふっ。アァ、いいのう……。ナミヒトの魂は最高じゃ……。ナミヒトの心が、芯が、核が伝わって、焦がれる……。恨みを抱え……それでも折れず、燻り燃え上がる熱情。暗い想い、明るい想い、どちらかが少しでも欠ければこの魂には成れんじゃろう……。まさしく、唯一無二……。ナミヒトしか、持ち得ぬ魂……」 唯一無二という言葉が、僕の琴線に触れる。与えられたものでもなく、奪い取ったものでもない。僕の魂は、僕が育んだ、僕だけのものだと、クロエは言ってくれている。そして、それが、これほどまでにクロエを強くしていることが嬉しい。 「アァ、アァ、アァ……! 魂が、震えるッ! ナミヒトの喜びが、直に胸を打つッ! アァ……愛おしい……。なんと愛おしい、可愛らしい喜びじゃ……。是が非でも、この想いに、応えたいッ!」 クロエは息を荒げ、瞳を潤ませる。 ……少し、危なくなっていないかい? 「そんなことはない、ないぞナミヒト……。それどころか、最高のコンディションで、最高にご機嫌じゃ。ナミヒトの為に、我が力を振るおう。我が王に、凱旋を与えよう」 ……好きだね、王様。 「ナミヒトはその座に見合うと、我は確信しておるからじゃ。だから、王族の我がここまでいうのじゃから、な? 言いたいこと、分かるじゃろ?」 ……分かったよ、お姫様。 「くふふふふふっ。ほんっとうに、ナミヒトは可愛いのう。よだれが出そうじゃ」 それは勘弁。お上品でいておくれ。 「……さぁ、行こうか。僕はここで、王を名乗ろう」 「承った!」 地上では、僕たちが氷塊に押し潰されていないのに気付いたのか、氷魔法使いが辺りを見渡している。 まずは、分からせてやれ。 クロエは聞こえるように、凛と通る声で言う。 「クックック、柔い氷じゃ」 腕に力を籠め、こぶしを握る。 「砕いてやろうぞ。その驕りと共に!」 腕を振り上げ、氷塊に叩き付ける。 氷塊は土煙と共に砕け散る。 そして、クロエは颯爽と彼らの前に降り立った。 「…………ッ!?」 パイロキネシスが息を呑む。クロエの変貌に驚いているのだろう。 クロエはパイロキネシスなど歯牙にもかけず、熱に浮かれたような声音で、 「さぁ、我が王の凱旋じゃ。ひれ伏せい」
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